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タイトル
男の工具

辻

共栄社は、芝刈り機をはじめとする芝管理機械、つまり「芝生を管理するための道具」を製造、

販売しています。

これらの道具は、家のお庭からスポーツ施設まで幅広くお使いいただいています。しかし、

この道具をいつまでも良いコンディションで使うにはメンテナンスの必要があります。

共栄社の製品は、一般的には「長持ちする道具」と評価されています。20年ご使用いただく

お客様も多く、時々、修理や部品のお問い合わせをお客様からいただくのですが、私でさえ

記憶の彼方にある製品が、いまだに大切に使用されているのに驚くことがあります。

長く使っていただけているのは、お手入れ、メンテナンスがきちんとされているから

に他なりません。共栄社は製造メーカーですから、もちろん私は「新しい製品を多くのお客様

に買っていただきたい」という思いがあります。しかし、「いつまでも長くお客様に使い続けて

いただきたい」という思いもあります。

ここでは、少しでも長く道具を使いたい方や、出来ることは自分でやってみたい方、道具を

大事に使いたい方などを対象に、道具を長く大切に使うメンテナンスについて、工具の側から

いろいろと考えていきたいと思います。

道具と工具、同じような意味ではありますが、どちらも長い寿命や需要に必要なものです。

それでは「道具(芝管理機械)をメンテナンスするための工具」、筆者お気に入りの工具の

お話をさせていただきます。


まずは筆者の生い立ち。

冒頭に少しだけスペースをいただきご披露させていただきます。

私が工具を使い、初めての修理経験したのは、小学生のころ。

自分の自転車のパンク修理だったと記憶しています。

小遣いを使うことがもったいない気持ちが強かったこともありますが、自分でできるので

あれば直してみたい衝動にかられたことがきっかけです。

まだインターネットという言葉も聞いたことがない時代。自転車屋さんの修理を見て覚えた、

見様見真似の素人修理。直したはずの穴から空気が漏れることもしばしば。

穴がふさがっていなかったり、他にも空いた穴に気づかなかったことも。

タイヤに残っていたガラス片を取り除かなかったため、また同じところに穴が開いたことも

ありました。

何回か失敗を重ねるうちに、パンク修理は簡単だと思えるようになってきました。

そして、初めて自分でパンク修理ができたときは、本当に嬉しく、直した自転車であちらこちら

を走り回りました。

こんな私が社会人となり共栄社に入社した当時、数千点の部品一つ一つが組み合わさって

一台の乗用芝刈り機になっていることに驚きました。

そして、ボルト一つを緩めるのに何種類もの工具があることが不思議でした。

私が入社後一番はじめに支給された工具がこちらです。

工具

機械修理用工具セットという名前だったと記憶しています。

残念ながらその時の工具箱は壊れてなくなってしまいましたが、依頼、30年間相棒として

使ってきました。出先で修理がうまくいかなくて途方に暮れていた時も常に一緒でした。

私はそこから30余年、バロネス芝刈り機一筋に向き合ってきました。

さすがにこれだけではメンテナンスができないので、少しずつ工具が増えていきました。

工具片手に社内での修理、ゴルフ場や公園などでの出張修理も数多く経験し、自分の修理に

よって、動かなかったものが動くようになった時の喜びや達成感をあじわせてもらっています。

そんな私が工具にこだわる理由をお話しするわけですが、本題の前に前知識として、基本的な

ボルトとレンチのお話しをします。


【ボルトの話】

ボルトには種類があります。

ボルトには太さや長さ、強度が異なるもの、特殊な形状をしたのもなど、用途に合わせて様々

な種類があります。家庭用芝刈り機(LM4D)であればボルトは10本使われており、スポーツ

施設向けの乗用芝刈り機(LM2710)であれば、約700本が使われています。

これらボルトには適正締め付けトルク(締め付け強さ)があり、一般規格品のボルトの頭部

には、普通ボルトであれば「4.8」、調質ボルトでは強度の高さにより「8.8」や「10.9」などと

強度区分が表示されています。ちなみに強度の高い順に並べると、10.9>8.8>4.8となり、

数値の大きい方が強度が高くなります。

ボルト

さらに詳しいことを知りたい方は、バロネス製品の取扱説明書の<締め付けトルク>をご覧

ください。


【レンチの種類】

ボルトを緩めたり・締め付けたりするには、工具が必要となります。

この工具にも種類があります。

ただボルトを回すだけなのに、何種類もの工具があるのには理由があります。

目的に合った工具の使用が重要です。

比較的軽くて、取り扱いやすく、構造上メガネレンチを使う事が出来ない、長い軸上のナット

などに使用。ボルトの2面しか接触しないため、強い力をかけるとボルトの頭部が舐めて

丸くなりやすい。

スパナ
しっかり締まっているナットをスパナで緩めています。

ナット
ナットの角がスパナでつぶれ、丸くなり始めています。


ボルトをくわえる部分の広さを調整できるので、1本あればいろいろな大きさのボルトに使用

できる。しかし調整が可能であるが故その部分の精度や、使用するときにボルトにぴったりと

合わせないとボルトの頭を舐める場合がある。

補助的に使用するときや、あまり使う事がない大きなボルトサイズのときだけ限定的に使用

したい。

モンキーレンチ
ナットを緩めるときに、補助としてモンキーレンチを使っています。

モンキーレンチ
大きなサイズの配管ナットをモンキーレンチで締めています。


ボルトの6点に接触するため、信頼性が高く、強い力をかけて使用することができる。

しかし、ボルトから抜きハメ直す必要があるので、スパナに比べ作業性が悪い。

力をかけなくてはならない緩め始めや、最後に締め切る場合に使用したい。

メガネレンチ
しっかり締まっているナットをメガネレンチで緩めています。


ボルトサイズに合わせて付け替えるソケットと、ハンドル部分が分かれているレンチで、

ラチェット機能付きのものはハンドルの往復操作だけで素早く緩めたり締め付けたりできる

便利なレンチ。ソケットは、ボルトの6点に接触するため信頼性が高く、強い力をかけて

使用することができる。

ソケットレンチ
上からラチェットハンドル、エクステンションバー(延長棒)、サイズの異なるソケット。

ソケットレンチ
奥まった場所の4本のホイールボルトを、エクステンションバーで延長してボルトを締め付けます。


ボルトは規定のトルクで締め付ける必要がある。

しかし、そのトルクは目では見ることができない。

そこでトルクレンチを使用し、規定トルクで締め付ける。

トルクレンチ
黄色枠内の目盛りで設定トルクに合わせます。

しかし、常にトルクレンチを使用しているわけではない。エンジンのシリンダーヘッドや

クランクケースなど、多くのボルトを均一な締め付けトルクで締め付けなくてはならない部分

は、必ずトルクレンチを使用し圧縮漏れや油漏れを防ぐ。その他には、走行系(足回り)の

締め付けにもトルクレンチを使用する。

トルクレンチ
決められた締め付けトルクで、均等な強さで締め付けます。

普段使用しているスパナやソケットレンチでは、レンチの長さや持つ位置により締め付けた

感覚が異なるので、この工具の場合にはこのくらいの力で締めたら、○○N-mという感覚を身に

付けると作業性がよくなる。

ただし、締め付けトルクが重要な場所ではトルクレンチを使って正しく締める必要がある。


次からは、私のお気に入りの工具、題して「男の工具」を紹介します。

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