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タイトル
オレと芝生

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今回の「オレと芝生」は海外取材です。

アメリカの有数のハイエンド・ゴルフ場にてスーパーインテンデントを務め、多くの

改修計画とメジャートーナメントの誘致に貢献してきたラス・マイヤーさんにお話を

伺いました。

今取り組んでいること、気候への対処、仕事への思い、日本の仲間へのメッセージなど、

熱く語っていただきました。

ご一読ください。

ラス・マイヤー

私がサザンヒルズ・カントリー・クラブに移籍して3年目が経過しようとしています。

今、私はゴルフコース・アーキテクトのギル・ハンスと共に、オリジナル設計者である

ペリー・マクスウェルの設計したコースの改修プロジェクトに取り組んでいます。

主な改修はフェアウェイ上の排水改善とクリーク(小川)の改良を皮切りに、バンカーの

形状変更、そしてグリーンに埋設しているヒーティングとクーリングの温水式循環

システムの導入です。

ここで一番注意しているのは、コースの基本設計コンセプトを崩さないことです。

サザンヒルズ・カントリー・クラブの設立は1936年、まさにアメリカの黄金時代の

草創期に作られたゴルフコースです。

この約80年間、トーナメントの招へいやメンバーからの要請により、多くの改装を

施してきました。

今、私が目指しているのが、かつての写真や図面を見ながら分かる範囲で、樹木や

クリークの位置を元に戻すこと、そう、オリジナル・コース・デザインの復元なのです。

当時の優れたコース設計を現代に、最新のテクノロジーを利用しながら復活させるのが

狙いです。

この投稿をご覧いただいている多くの日本のゴルフコース管理者の皆さんも、この改修

プロジェクトが簡単な仕事ではないことはご理解いただけると思います。

しかし、私はこの仕事にキャリアに基づいた経験があり、成功させる自信があります。

そして、自身にいつも言い聞かせています。

「出来ないことは無い」と。

これは仕事全てに言えますが・・・計画を実行するには実に多くの障害が生まれます。

しかし、事実は事実として上司にしっかり伝え理解してもらわねばなりません。

私の周りでは待遇のことを心配して本当のことを上司に伝えず、自身の仕事をねじ曲げて

しまう人も多くいます。

しかし、それでは理想のターフ~ゴルフコースは作ることはできません。

それは上司に対してだけではありません。部下に対してもです。

ありのままに事実を伝え、共に困難に立ち向かう姿勢がチームを強くさせ、部下からの

信頼も得ることができます。

この私の限界にチャレンジする精神は4年間のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ

での経験の中で学んだことです。

そこで「妥協しない」「言い訳しない」仕事の仕方を学びました。

いつでも私の頭の中ら離れないのが、オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで多くの

実績を残した高名なスーパーインテンデント、マーシュ・ベンソンの言葉です。

「嘘をつかなければいけないような状況を最初から作ってはならない」。


今は世界中で異常気象が起きています。

しかし、私が今住んでいるオクラホマ州では天候不順は日常のことです。

多くの友人から異常気象時等への対処方法を聞かれます。

しかし、残念ながら、これにお答えする回答を私は持っていません。

つまり、教科書は無いと言えます。

自然と向き合うために私が心掛けているのは、3つの点、注意力、予測力、そして問題は

事前に潰しておく、ということです。

そして、それを実現するには日頃のターフのチェックと配慮を欠かさないことです。

我々はターフの管理者であり、ターフの研究者である必要はありません。

日頃のターフのチェックは、あくまで「プレイヤー目線」で行うことが大事です。

そう、如何にプレイヤーが美しいターフの上で、ダイナミックなゴルフ・プレイができる

のかが何より大切なのです。

最後に述べたいことは、「新しいエンジニアリングは積極的に試してみるべき」という

ことです。

ターフ管理も進化すべきです。

基本原則は保ちながら、より効率的で進歩的な管理を目指すべきです。

柔軟な考えは大事です。

前述のとおり、ここサザンヒルズ・カントリー・クラブでは、グリーンにヒーティングと

クーリングの温水式循環システムを導入しました。

2018年の冬は、ここオクラホマでも気温が低く、また日照もよくありませんでした。

通常であればスケジュールどおりの芝の発芽は難しいところです。

しかし、今年はこの新しい試みによって、スケジュールどおりの発芽に成功しました。

この取り組みの成功を私は誇りに思っています。

新しいテクノロジーは、いずれそれは普通の技術となるでしょう。

それをテクノロジーの進化と我々は言います。

私は、この投稿を読んでくださっている日本の仲間達にも、躊躇せず、強い気持ちで

新しいテクノロジーを採用し、自分の理想とするターフを実現できるよう伝えたいです。

皆さんのターフが美しく、素敵なゴルフ・プレイをこれからも提供し続けることを

祈っています。

ラス・マイヤー  


ラッセル(ラス)・マイヤー

1994年:

オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ(ジョージア州)にてアシスタントとして勤務。

4回のマスターズ・トーナメントに参加。

1998年:

カード・サウンド・ゴルフ・クラブ(フロリダ州)のスーパーインテンデントに就任、

コースの全面改修を行う。

2006年:

サザンヒルズ・カントリー・クラブのスーパーインテンデントに就任、

PGAチャンピオンシップ、USアマチュア・オープンの招へいに参画。

2012年:

ザ・ロサンゼルス・カントリー・クラブ(カリフォルニア州)にデイレクター・オブ・

ゴルフコースに就任。

北コースの全面改修に着手、同カントリー・クラブへのUSオープンの招へいに参画。

2016年より

サザンヒルズ・カントリー・クラブにて現職。

奥様と二人のお子様とオクラホマ州タルサ在住。

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