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タイトル
芝政ワールド

及部

テニス愛好家がなら誰もが知る“ウインブルドン”。そこはテニスの聖地である。

かつて、テニスのグランドスラムと言われる「ウインブルドン(全英オープン)」「全米

オープン」「全豪オープン」これらはすべて天然芝のテニスコートで行われていたことを

ご存知だろうか。そんな天然芝のテニスコートが日本にもある。日本で唯一の天然芝の

テニスクラブだ。


今回は、芝生でつなぐ文化とスポーツフィールド(テニスコート)管理における芝生との

関わりについてお届けします。

バロネスEメールマガジン読者の皆さまにその思いを語ってくださったのは、佐賀県に

ある日本唯一の天然芝テニスクラブ、グラスコート佐賀テニスクラブの統括マネージャー

緒方貴之氏とグリーンキーパー 樋口正人氏です。

https://www.gcs-tc.com/

グラスコート佐賀

グラスコートは別名ローンコートとも呼ばれる天然芝のコート。

テニス4大大会で、もっとも歴史が古く権威があるウィンブルドン(全英オープン)の

コートに使われていることでも有名である。

日本では極めて珍しい天然芝コート(グラスコート)が14面も整備されている「グラス

コート佐賀」、そこは充実した設備と田園の中に広がる美しい緑の空間の中で、テニスを

十分に楽しむことができる。

そもそも、なぜ日本に天然芝コートのテニスクラブがあるのか。

そこには今も後世にしっかりと受け継がれる創設者の熱い思いがあった。

グラスコート佐賀テニスクラブは、創設者の緒方勝徳氏がイギリスのウインブルドン

テニスクラブ(The All England Lawn Tennis and Croquet Club)の歴史伝統の重さと

風格品格に感銘を受け、1975年に設立した。

四季がはっきりしている日本では芝生の育成・維持管理が難しいため、ほとんど天然芝の

コートはない。

統括マネージャーの貴之氏によると曽祖父にあたる創設者の勝徳氏はテニス愛好家の

ちょっと代わった医師であったという。

それを裏付けるように勝徳氏はウインブルドンを訪れた際、ピルケースに芝生を入れて

持ち帰り、その芝生を佐賀大学に持ち込み、芝生の研究をしたという。

結果、ウインブルドンと全く同じでは日本の気候にマッチしないと、芝種も管理方法も

日本テイストにして今に至る。

ウインブルドンに学びながら、日本の庭園文化を織り込む、といったところだ。


グリーンキーパーの樋口氏は15年ほど前からここグラスコート佐賀テニスクラブで、

天然芝のコートの管理に携わる。

創設当初は、ゴルフ場の芝生管理を経験したスタッフが5名ほどでコートの管理をしていた。

以前、家具屋さんに勤めていた樋口氏は、造園屋さんのお手伝いとしてこのコートを訪れた。

そして、それをきっかけにそのままこのコートに芝生の管理者として籍を移した。

芝生の管理のノウハウは、先輩グリーンキーパーから学んできた。

「先輩方はプロでしたから、多くのことを学びました。」と樋口氏は尊敬の意を示す。

しかし、ゴルフ場とテニスコートでは、芝生の使われ方がまったく違う。

正直、5年ほど前は芝生の痛みが目立っていた。

そこで、グリーンキーパーとなった樋口氏は、土壌分析などの研究を取り入れたり、近隣

のスポーツ施設を訪れてサッカー・ラグビー場の芝生管理の情報を得たり、各国の天然芝

テニスクラブの芝生管理手法を試したりと、ゴルフ場管理の延長だった芝生管理をテニス

コートのための芝生管理にシフトしてきたという。

現在は3名で管理をしているが、芝生を健全な状態に保ち、コートサーフェスとして

快適な状態に維持するために、細やかな作業を休むことはない。

快適なテニスが楽しめるように、ボールは適度なバウンドをするように刈高7mmに設定

するなど、日々、テニスコートに適した芝生管理手法を探りながら、プレイヤーにとって

最高のコンディションを提供するための努力を惜しまない。

樋口氏は「芝生は手をかければかけるほど、応えてくれる。毎年違う条件だから

チャレンジできる、しなければならないと思っている。そして毎年違う顔のコートになる。

それが楽しい。」とグリーンキーパーの魅力を語る。

天然芝のコートは、芝生の維持管理に手間がかかるため、現在では、世界的にも数少なく

なっているコートでもある。

ここグラスコート佐賀テニスクラブがそれを守っている理由…それは、

“Only Oneのテニスクラブでありたい。人と人との交流であるテニスクラブの文化を

伝えていきたい。”

そんな先代の思いが脈々と引き継がれているからだ。

その証拠に2018年8月、グラスコート佐賀テニスクラブがウインブルドン創立150周年

記念式典に招待された。これは快挙である。

「この式典には、世界各国の伝統あるテニスクラブが招待されている。その中に当クラブ

を招待していただいたのは、先代の思いを引き継いで日本で天然芝コートを守り、テニス

の歴史と文化を広める努力をしてきたからだろう。」と統括マネージャーの貴之氏は言う。

ウインブルドンをはじめ、世界各国のテニスクラブとの交流がある貴之氏は、「ウインブ

ルドンは、間違いなく100年後も単にテニスをする場所としてだけでなく、多くの人々が

交流する社交場としても存在するはず。正直、天然芝コートの維持管理費はかかる。

でも、多くの人々にテニスの原点や魅力をより深く、知ってほしい。」と貴之氏は

力強く語る。


グラスコート佐賀テニスクラブに集まる人々にとって、天然芝コートへの憧れと思いは

人一倍である。

そして「ウインブルドン」、それは“夢”である。

このコートから、その夢を叶えた選手も、数多く飛び立っている。

テニス愛好家なら誰もが一度はプレイしてみたいと思うこの天然芝コートのテニスクラブ

が、多くテニス愛好家の人と人がつながる社交場になることを願っている。

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